山岡荘八「柳生宗矩」
山岡荘八は実はコレが初めてなのですが、
なんというか、当方のような伝奇方面から宗矩くんを
認知した輩にとって、本作の提示する「柳生但馬守宗矩」像は
まさに「宗矩」という概念を根底から覆すような
大威力を秘めたシロモノでございます。
まさに、「ザ・ニュー宗矩!」(もしくは宗矩ゼロ)
とりあえず、世間一般における宗矩像というのは
我々にとって常識たる「邪悪生物」ではなく、
「剣禅一如を成し遂げた偉人」らしいと認識できる、
という効果を保持している一点において、
本作は「概念破壊」のためのツールとして
まこと超絶なる威力を有していると言えます。
だって、あの宗矩くんが、
自らの栄達と保身の為ならば、どんな超卑怯手段だって
平然と、というかむしろ嬉々として行使するはずの
ボクらの宗矩くんが、
> 柳生の活人剣とは、自分に甘い無責任な道ではない。
>人は斬らぬが、わが身に厳しい
>「身を殺して仁を成す」ほどの道でなければならなかった。
なんて言っちゃうわけですよ!
どうしたっていうんだよ宗矩くん!
君はそんな奴じゃないだろう!?
あまつさえ、
>「左門……」
>と、宗矩は一度だけ呼びかけた。
>そして、それなり、この老人が、
>このように泣けるものかと思うほどに泣き続けた。
なんてくだりが出た日にゃ、
「十兵衛両断」における友矩への仕打ちを知っている
我々の困惑は頂点に達したりするわけですよ。
違う、違うよ!
宗矩ってそうじゃないだろう!?
そうは思いませんか皆さん?
…などと言ったところで、我々が知っている
邪悪生物としての宗矩像の方が
概念としては新しいようなので、
こうなると、俄然興味が出てくるのは、
「誰が宗矩を邪悪生物化したか」
という点で砂。
おそらく、何処かの誰かが
「柳生宗矩が邪悪生物だったら超面白え」とか思いついて、
それを形にしてしまったのが始まりだとは思うのですが、
それが何であるか、というのが第一歩だと思うのですよ。
とりあえず、「柳生武芸帖」を読むべきでしょうか喃。
今は、同じく山岡荘八「柳生石舟斎」を読んでいるので、
その読了後、「柳生武芸帖」に手をつける所存でアリマス。
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