荒山先生トークショー再び 〜やっぱり荒山先生は荒山先生だ〜

 さて、前回のトークショーから早三年。
こうして再び荒山先生のトークショーが開かれるとは思いもしませんでしたが、
いや、世の中何があるかわからないもので砂。
このイベントを主催されたKENZAN編集部&編集長に感謝したく。



 というわけで、当然のように行ってきました。
池袋のジュンク堂本店4F、イベントコーナーにて行なわれた
このイベントに…!


  荒山徹(作家)×細谷正充(文芸評論家)
  百済新羅石田三成(ソクチョン・サムスン)を巡る時空−


 ちなみに、このトークショーの録音記録は、
ジュンク堂のサイトにて、1週間〜10日後くらいに公開される予定との由。
個人的には、是非そちらもお聞き頂きたく思う所存。
イヤもうだって、スゴいンですからして。
ナニがというと、


    「荒山先生の変わらなさっぷり」が。


 以前当方は、


> 「荒山先生はパーフェクトナチュラルパワー」


 と書いたわけですが、
今回も荒山先生は相変わらずであり、
パーフェクトでナチュラルでデストロイな趣でありました。
いやだっていかにも人の良さそうな朴訥風の趣で、


 「(作品内に怪獣が出てくるのは)文化の所産です」


 とか言い切っちゃうんですぜこの人?
「文化の所産」ですよ奥さん。
歴史伝奇小説に怪獣を出す理由に「文化」て。
なんていうか誰かが一度は荒山先生の頭部にチョップを
入れるべきだったのではなかろうかと思う今日この頃。


 ま、それはともかく、
そろそろトークショーの内容を、ダイジェストにてお送りしたく。
当方のメモは割とざっくりなので、後に三田さんが詳細に書くであろう
報告と併せてお読み頂ければ安心であり、
当方も思うままに適当ぶっこける次第。
さてそれでは。


■ まずは「徳川家康(トクチョンカガン)」


 「まさかまたトークショーをやるとはのう…」と
なんだか富樫と虎丸気味な趣で口火を切ったのは司会役の細谷さん。
前があまりにも密度濃すぎたので、どう話を始めたものかと悩まれたそうですが、
まずは、「では、近作の作品について」というところからゴー。


 細谷さん(以下:細谷)「まず、徳川家康(トクチョンカガン)ですが、
               あれを書こうと思われた動機は?」
 荒山先生(以下:荒山)「隆慶先生へのリスペクトです。
               先達の足跡を踏もうと」
           細谷「踏みにじろうとしたわけではなく?(笑」


 その後、「影武者徳川家康」以外の元ネタとして、
コリン・フォーブズの「石の豹」のタイトルが、
「一国のスパイが、敵国のトップになる」という話に、
「これならば、影武者とは違う切り口で迫れるのではないか?」と。
なお、荒山先生曰く、


 荒山「国際謀略ものはいいですね。フォーサイスとか。
     ”国家と国家の争いの陰には謀略あり!”と」


 だそうで。
その後、トクチョンの自己評価について、
影武者に比してどうであったかと問われ、


 荒山「なんというか…「風の呪殺陣」のような…」


 という感じで、まだまだ追いつけていないとの由。
あと、作中での幸村の扱い(鬱病に掛かって自暴自棄になり、
後世に名を残すことしか考えなくなる)については


 荒山「ああいう状況になったら、鬱病的な心理状態になるのも
     無理はないのではないかと」


 とのこと。


■次に「石田三成(ソクチョンサムスン)」


 で、「石田三成」に。
まず皆が気になってたことを細谷さんがズビシと!


 細谷「何故”柳生大作戦”からタイトルをコレに?」
 荒山「いやぁ…トクチョンの受けが良かったので、あやかろうかと」

 細谷「一部では、”サムスン”って言いたかっただけでは?と言われてますケド」
 荒山「いや三星って、実際には「サムソン」なんですよね。
    でも日本じゃ「サムスン」って読んでるし、割と調子もいい感じなので、
    これまたあやかろうかな!と」


 何か深い意味があったのかと思ったら、全然そんなことなかったぜ!
そして作中の構成(現代と過去の同時並行で話が進む)について
話題が進んだところで荒山先生が一言。


 荒山「あ、今、自分で言ってて気づいたんですけど、
     これ「柳生十兵衛死す」ですね」


 先生ェ…。
なお、この後、「また怪獣が出てきたけど、やっぱ好きですか?」と問われて、
前述の答えである


 荒山「(作品内に怪獣が出てくるのは)文化の所産です」


 が出てきたり。
より正確に言うと、


 荒山「子供の頃からああいうもの(特撮)に囲まれていたので、
     もう自然に出てくるのです。そう…「文化の所産」ですよ」


 との由。
誰かチョップしろ、チョップ。
その他、更に「文化」の話として以下のお話が。


 「ソクチョンに出てきたロウロスについて」
  細谷「ロウロスはやはりロプロスで?」
  荒山「はい」
  細谷「残りのポセイドンとロデムが出なかったのは?」
  荒山「まあ、1体出したし、もういいかなあと」
  (この後、細谷さんに「ダメだッツーの!ちゃんと残りも出せっての!」とクンロクかまされ、
   「じゃあ、他の作品で出すかも…」と答えたり)


 「「竹島御免状」に出てきた搭乗型の式神について」
  細谷「あれ、マジンガーですか?
  荒山「いえ、ジャンボーグAです」

  (そういう問題じゃねえ)


 「ハングギドラ(「韓国であったことよ!」)について」
  荒山「いや、昔韓国で「日本は韓国だった!(イルボンハングギドラ)」という本が
      出てまして、それを見た瞬間、「これだ!」と。
      それ以来、ずっと暖めてたのですが、いや、ようやく出せました(ホッコリ」
  細谷「ちなみにどれくらい温めてたんですか?」
  荒山「14・5年くらいですかネ?」

  (所謂右寄りの人が怒りそうなタイトルですが、そんなの見て
   「このタイトルはいつかネタに使おう!」と思いつくのは荒山先生くらいかと)


 「ガウガメラについて」
  細谷「あれ、「亀ではない」って書いておられましたけど…」
  荒山「いや、講談社から出てる「興亡の世界史」って本で、
      「ガウガメラの戦い」とあるのを見て、「これだ!」と。
      あとで調べたら本当だったので「イケるな!」と。
      まあ、ペルシャ〜日本の交易路があるなら、
      大阪湾にガウガメラが沈んでてもおかしくないな!と」
  (その昔、「埼玉は…ブラジルに近いな!」という理屈で
   ブラジル人仮面レスラーが爆誕した話がありましたが、
   まさかそれに近い理屈を現実に聞くことになるとは)


 「近江百済党について」
  荒山「私にとって、○○党というのは、
      自民党とか民主党とか以前にまずなにより、
      卍党なのです。超カッコイイですよね「党」。

      だから是非使いたかったのです」


 この他、赤影がモデルだけどすぐ死んで正直スマンカッタなキャラとか、
あれこれ話が出たのですが、最後に言ったこの言葉は
荒山先生というお方の本質に迫る言葉であったなあと。


 荒山「別にそれを探して読んでるわけじゃないんですよ?
    たまたま見つけたら「これだ!」となるだけで」


 やはり荒山先生はパーフェクトナチュラル…。


■3つ目は「竹島御免状」


 ここで再びボク達が聞きたくて(というかツッコミたくて)しょうがないことを
ズバーン!と聞いてくれる細谷さんはまこと漢前であるなあと。


 細谷「あの、最近の荒山作品では、
     山田風太郎作品が前提になってることが多いようなのですが…。
     「魔界転生」ですよねコレ?」
 荒山「いや、それなんですけどね。
     鳥取に取材に行った時、パンフに「鳥取は剣豪の里だ!」とありまして、
     なら、鳥取舞台の話なら、剣豪を出さないとなあと」
 細谷「ふむふむ」
 荒山「で、まあ筆頭は荒木又右衛門なわけですが、もう死んでるので、
     復活させる必要があるわけですよ。
     そうなると、魔界転生を無視するのは失礼だな、と」
 細谷「失礼?」
 荒山「ええ、だって又右衛門を復活させるってのに、
     魔界を無視するとかありえないじゃないですか。
     だったら、いっそ正々堂々と、作中で又右衛門自身の口から
     復活していたことを言わせないとダメだろうと」


 いやいやいや、そういう問題じゃねーだろ、と、
ここは皆が突っ込むべきだったのかもしれませんが、
あまりにも荒山先生がナチュラルに回答したので、
「なるほど。じゃあ仕方ないな」と思ってしまったのはナイショでアリマス。
あの時の荒山先生は本気と書いてマジと読ます感じでしたよ…。
あ、でも、一応フォローがあって、


 細谷「で、又右衛門には次はあるんでしょうか?」
 荒山「いや、やっぱあんまり甦らさないようにしますよ」


 そこで「あんまり」をつけること自体如何なものかと思うんだが、
ここに至ってはこれをフォローと感じられるのだから人間の適応力ってのは
大したもんだなあと。
なおその後、


 荒山「しかし、伝奇は何を書いても山風先生の作品に行き当たりますね。
    関東ローム層ならぬ、山田風太郎層という感じで」


 という発言もあり。


■そして質問タイム(途中、新刊・新連載情報あり)


 程よくテンション上がってきたところで、
会場内の参加者が出した質問状から細谷さんが色々チョイスして
荒山先生に質問タイム開始(以下、質問は”Q”、荒山先生の回答は”A”)


 Q「サムスンでは柳生はあまり活躍してませんけどあれは何故?」
 A「そうですか?前半宗矩、後半宗章のつもりだったのですが…」

   荒山先生的には、宗章の天丼的行動も活躍だった由。
  その他、「タジマカミは但馬守に読めるな!」とか、
  「牽強付会ですけど、近江って実は百済に近いんですよ?」とか、
  奥さんの内助の功とか、そんな話がワラワラと。


 荒山「隣国の歴史を身近に知ってもらうためにどうしたらいいのか、と
     考えた末に小説という手段に行き着いたわけで、
     その辺りでは、今回、壬申の乱関ヶ原を背景に選んだのも戦略です」

  なんて話もあり。


 Q「柳生黙示録は単行本になりますか?」
 A「なります。
   なお、ちゃんと加筆修正して出します。

   そのことを編集さんに話したら「おお」と言ってもらえたので、
   年内目指して頑張ってます」


  ちなみに、黙示録のラストがああなった理由は、


 荒山「いや、「私はキリスト教をナメたッ!」という感じで。
     正直、調べれば調べるほどこれが凄いものだとわかって、
     パニックになってしまいまして…ちゃんと調べて、
     もっとクリアなものにしたものを書きます」


  とのことで、荒山先生のこういうところは好感が持てま砂。


 Q「朝鮮から離れたものを書く予定はありますか?」
 A「今、講談社創業100周年記念出版で1本書いてます。

   舞台はフランスとイギリス。朝鮮は一切ゼロです。
   …十兵衛は出るけどな!
   タイトルは


      『友を選ばば柳生十兵衛


    ダルタニアンも出ますよ?
   視点はダルタニアンメインで、最初は敵、後で友になります」


 細谷「それって…ブルボン柳生やハイランダー柳生が?」
 荒山「いや、流石にそれは控えようかな、と。
     …ヴェルサイユ柳生とかどうかな?とも思ったんですけどね。

     舞台としては、「ダルタニアン物語」の2巻と3巻の間…2.5巻という感じです。
     そこに十兵衛が!」


  あと、100周年記念出版なので、年内には間に合わせるとの由。
 ここで更に、その他の近作についての話にも。


  細谷「”オール読物”の「朝鮮通信使」シリーズは?」
  荒山「あれはあと1本書いて1冊にしようかと。

      正式な朝鮮通信使をわざと全部抜いてのシリーズになりましたが、
      どうしてそうなったかの理由もわかる話にしようかと」


  細谷「「シャクチ」は?」
  荒山「そろそろ武帝の朝鮮征服ですね。
      今のところはまだかかりそうかなと」

  (その後、コナン(not名探偵)の話に。
   こんな面白いものがあるとは!と感心したことなどの話になる)


  細谷「その辺りの小説を読まれたことはなかったのでしょうか?」
  荒山「あまり読んでませんね。ラヴクラフトならありますが」
  細谷「それはヤマタノオロチの描写とかでもありましたね。
      …すると、いずれ邪神VS十兵衛も?」
  荒山「…あるかも」


  細谷「あと、今、北日本新聞での連載は?」
  荒山「「砕かれざるもの」ですね。

      前田家に伝わる秘密文書に絡んで、宇喜多秀家の孫が活躍します。
      やっぱり十兵衛も出ますよ?
      今度は妖術や怪獣抜きなので、剣豪小説ですね。
  細谷「その…それは自主規制ですか?」
  荒山「まあ、たまには節度を、と。
      ちなみに今30話まで進みました」
  (その後、このトークショー主催のKENZAN編集長が
   これは後に講談社から単行本として出る予定であることが発表)


  荒山「その他、四国を舞台に長宗我部元親主役の話を考えてます。
      彼ってゲームで人気みたいですね。なんでも片目キャラだそうで…」
  細谷「BASARAですか。
      そちらで元親を知られたので書きたいと?」
  荒山「いえ、そうではなく、あくまで四国を舞台に書きたいな、というところで、
      彼が浮かび上がってきたのです。
      私の場合、順としては、


         「題材→時代→キャラ」


       なので、まず題材ありきなんです。
      必要なキャラがいなければ、甦らせればいいのです!
      あ、ちなみにこっちは十兵衛出ません」


  荒山「あと、次のKENZANでも新作を書きます。
      まだ決めてませんが、ハジケたものにしたいですね」

     (何を書くつもりなのか)


  というところで新刊・新連載情報が一気にどばっと。
 これからも期待できそうなネタが続くのは嬉しい限り。
 …でも、「ハジケたもの」って一体荒山先生はナニをしでかすつもりなのか。
 KENZAN編集長は今度こそ荒山先生にチョップをかます準備をするべきで砂。


 Q「自作は宝塚になったらいいな、と思いますか?」
 A「なきにしもあらず。
   …なったらいいな。
   ……なったら嬉しいです」


 Q「自作のコミカライズの話が出たとすれば、どうお考えですか?」
 A「あったらありがたいですね。残念ながらそういうお話はまだありませんが…。
  (ちなみにこの時、荒山同人誌の送り先はKENZAN編集部でOKとの回答が)


 Q「影響を受けた作家を教えてください」
 A「西村寿行さんです。
   高1の時、「白骨樹林」を読みまして…。
   私の話がエスカレートするのは、西村先生の影響ですね」


 細谷「山風先生や五味先生の影響は?」
 荒山「そちらは作家になってから読み始めたので、
    影響という意味では、やはり西村先生が。
    その他、伝奇という意味では荒俣先生でしょうか」


 Q「以前のトークショーで話に出ていた
   中国やベトナムの話はどうなりましたか?」

 A「スイマセンやってますけどまだ構想中です」


 Q「大河原作の目はあると思いますか?」
 A「絶望してます(即答)」


 Q「家康朝鮮人説は信じておられますか?」
 A「いえまったく(これも即答)」


 Q「最近の宗矩は白いのが多いけど、
   白と黒ならどっちが楽しいですか?」

 A「黒ですね(また即答)。
   もう萬屋錦之助の陰謀宗矩のニンマリ面がたまらんですよ…黒いなあ」


 Q「柳生と朝鮮以外だと、何が一番書きたいですか?」
 A「柳生と朝鮮以外…ですか……………(長考中)。
   ………う〜〜ん………………………(長考続く。本気で悩んでる様子)。
   …あ、中国史ですね。
   ただ、中国人の中国史じゃなくて、周辺民族の中国史
   岳飛の側の話じゃないやつで」


 Q「秘奥義はどうですか?」
 A「秘…奥義?」


  細谷「ホラ、男塾とかであるような…」
  荒山「男塾!そうそう!一言言わせてください!
     実は友人に「これって…ええとナンとか書房(「民明書房!」と皆突っ込む)、
     そうその民明書房だよな」って言われたんですけど、
     実は私、男塾は読んでないんですよ。
     ジャンプ自体は結構読んでたんですけど、絵柄がどうも…。
     なので、なんのことだろうと思っていたのですが、
     教えてもらってようやくわかりました。
     まあ、やっぱり読んでないんですけどね」

 そして、長かった質問タイムも、最後の一問を残すのみとなった…。
その質問は如何に。


  Q「「柳生石舟斎(著:五味康祐)」復刊!」
  A「何 故 こ こ で そ れ が 出 る」


 何故か最後が謎の質問でしたが、ともあれこれで質問は終了。
そして…。


■最後に一言

 荒山「本日はどうもありがとうございます。
     「鳳凰の黙示録」は直すつもりでしたけど、結局直せずスイマセン。本当すいません。
     「黙示録」って言葉は好きなので、「柳生黙示録」でも使いましたけど、
     鳳凰では失敗したので、今度こそちゃんと直すのでお許し下さい。
     伝奇の灯を絶やさないように頑張りますので、応援頂けましたら幸いです」


 こうして、今回のトークショーは終了したのです。
この後、ミニサイン会があったり、颯田さんが同人誌と矩香&典香のイラストを先生に渡したり、
当方がノッカラ仮面を着装してみせたりしたこともありましたが、
概ね和やか&愉快に終了し、今回も密度の濃い1時間でありました。
いやぁ…またもや愉快極まりないイベントを堪能でき、欣快の至り。
主催のKENZAN編集部&ジュンク堂本店と、司会の細谷さんには感謝の限りを尽くしたく。


 いや、愉快痛快でありました。
行ってよかったでアリマス。
次もあれば、是非とも再度参加する所存ー。