「柳生大戦争」あるいは荒山先生の新たなる戦い

 
 「ようやく」と言うべきか、「遂に」というべきか、
そして、「出た」と言うべきか、「出てしまった」と言うべきか、
とにかく過去の荒山先生の作品の中でも
トップクラスに扱いに困る作品であるところの
「柳生大戦争が日の目を!


柳生大戦争

柳生大戦争


(以下、ネタバレあり)
 タイトルこそ「柳生」大戦争ですが、
本作は、"中華"と朝鮮、そして、その底にある
華夷秩序という概念に対峙する人々の物語です。
柳生一族は、この物語においては狂言回しであり、
歴史という大きな物語に彼らは関わりません。


 そのため、本作は従来の荒山作品とは異なり、
より歴史小説の文脈で書かれています。
つまり、今回は、


 「事件の裏に柳生あり!」
 「朝鮮妖術が歴史を変えた!」


 といういつもの歴史伝奇とは異なり、
ただ歴史という物語が語られていくのです。


 ひとつを除いて。


 つまり何が言いたいかといいますと、
ここまで書いておいてナンですが、本作がやはり歴史伝奇であり、
それを担保する本作最大のネタこそ、第一部のクライマックス、


 「荒山先生の捏造講座(檀君編)」


 であるということなんですよ皆さん!
一応、一然国師の手紙って形式取ってますけど、
これ語ってるの明らかに荒山先生本人でしょ。
もう「捏造ってのはこうやるんだよヒャッハー!」という
荒山先生の伝奇ソウルが炸裂するステキテキストでアリマス。
ノリノリとかそういう次元じゃないよこれ。
歴史、というか神話をファックするにも程がある。
その地上最自由っぷりを見るためにも、
是非とも皆様にも本作を読んだ頂きたく。


>「本作は、私の大戦争の始まりでもあるのです」


 とは荒山先生の言葉でありますが、あらためて思う。


 荒山先生は一体何と戦ってるのか。


※ せっかくなので追記


・ 毎度ながら僕らのアイドル宗矩くんが素晴らしい。 
 彼だけはいつまでも変わらぬクオリティ。
 しかも今回は出オチもこなします。
 ステキ過ぎる。


・ スペイン人…。


・ 相変わらず縦横無尽に活用されまくる新陰流。
 そのうち、「新陰流でダイエット成功!」とか
 「新陰流でモテモテに!」とか言い出しかねない勢いです。


・ 他の作家の作品を引用しまくり。
 というか引用してるくだりでは、地の文が口語調に。
 やっぱり「面白いから君達も読め。是非読め」
 ということなんでしょうか。


ケン・イシカワ御大が亡くなられた今、
 荒山作品をビジュアル化しうる候補が
 却って百出される趣ですが、本作二部に限定すれば、
 魔夜峰央がどうしても脳から離れません。
 ああ!アイシャドウの濃い友矩が!