「柳生百合剣」


 「小説トリッパー」で連載されていた
「柳生百合剣」が単行本になったので紹介をば。
まあ、既に感想も高橋メソッドも書いたわけですが、あらためて。


柳生百合剣

柳生百合剣


(以下、ネタバレありで)


 本作は十兵衛の超強い姉が大暴れする「柳生薔薇剣」の続編であり、
この物語を一言で述べるとするならば、


 「柳生十兵衛三厳の死と再生」


 とでも言えばいいのでしょうか。
一応、言ってる事は間違ってないですよ?
なんせ、あの十兵衛が姉萌えをこじらせた挙句引き篭もりになり、


 「姉上!姉上!あねうえーっ!」


 とか言いだして、
ダブルの意味で漏らすような有様に。
かつてここまでダメな理由で柳生の里に逼塞した十兵衛がいたであろうか?
否!断じて否!(byボルト)
つか、なんというシスコン!


 そして、そんな腑抜け十兵衛の前に降りかかる
柳生新陰流消滅」という驚天動地の大災厄。
あのボクらのアイドル宗矩くんも、こっちでは受けな友矩も、
柳生の里の高弟たちも、一人残らず素人同然に!
そして全然出番のない宗冬と尾張柳生が涙を誘います。
なんといういらない子…!


 勿論、荒山世界ですから、こういう異常事態は全て、


 「だって朝鮮妖術だから」


 の一言で説明が済んで大層楽なのですけど、
今回の朝鮮妖術師はなんと伊藤一刀斎なのです。
そう、あの一刀流創始者伊藤一刀斎景久。


 なんで伊藤一刀斎が朝鮮妖術師なのよ、と問われれば、
これはもう意味不明だが、おそらく、


 「おれは伊藤一刀斎だ!」


 ということなのだろう。
言葉の意味は不明だが、とにかく凄い自信だ!


 しかし、こんな発狂設定にも関わらず、
「だって荒山先生だから」と言われちゃうと、
納得できてしまう次元に辿り着いてしまったことを思うと、
荒山先生の伝奇力(でんきちから)は
「成長性:A」と評するしかない趣で砂。


 こんな無茶な設定から、十兵衛が如何にして復活し、再生するのか、
そして、毎度ながら作品内における凄まじいまでのネタの嵐を
是非とも皆々様にご確認頂きたく。


 しかし、今回、個人的に評価したいこととしては、


 「友景を出さずに済ませた」


 ということで砂。
今回の朝鮮妖術のシステムで考えれば、
友景の剣気も消えてないわけですから、
十兵衛超ピンチのところで、


1:ハンサムな十兵衛は突如として反撃のアイディアを思いつく
2:仲間が来て助けてくれる
3:どうしようもない。現実は非情である


 「答え:2」


 となって、友景が空間を割って出てきて
一刀斎を唐竹に割ったりすることも十分にあり得たわけですが、
今回は十兵衛(ともう一人)が頑張ります。
ちゃんと十兵衛が主役なのです。
「おまえはよくがんばった!」


 とりあえず、ラストに出てきた「もうひとりの女柳生」の物語が、
いずれ語られることがあるのか、というのが興味がありま砂。
さて、どうなることか。