「忍法さだめうつし」読了

 や、今回も愉快痛快でありました。


忍法さだめうつし

忍法さだめうつし


 本作を端的に表現するキーワード、
それは、


 「では、妖術に頼ろう」


 でアリマス。


(以下、ネタバレ)


 モンゴルが攻めてきたとあれば妖術、


 朝鮮ノストラダムスが何か言えば妖術


 ガメラが現れたとあれば妖術


 まさに「困ったときの妖術頼み」
しかも今回は日朝問わずして妖術忍術頼りまくりでアリマス。
なんというか、昔の人はもう少し妖術を節約した生活を
送るべきだったのではないでしょうか、
そう、今こそエコ妖術運動を!(代わりに地球に優しい柳生を!)


 しかし、それはそれとして、個人的に感心したのは、
本作は「小説NON」に掲載されていた短編4作をまとめた単行本なのですが、
ひとつにまとめてよむことによって、これらがゆるやかな連続性を持っており、
時代背景で言えば、高麗王朝の滅亡と李氏朝鮮王朝の成立、
そして、朝鮮史に名高い世宗大王の御世までの物語となる、 という点でありました。


 その朝鮮における激動の時代、日本は朝鮮とどのような関係があり、
その歴史の中で人々が如何に生き、如何に死んだかを鮮やかに描いた
新たな視点の歴史小説としても十分に読めたりするので、
ここら辺の腕が、荒山先生をして歴史小説家とならしめるのかなあ、と。
(実際、元寇後の日朝関係がどうであったかなどは、
 まだまだマイナーなわけですし)


 しかし、そこで荒山先生の妖術力(ようじゅつ・ちから)
容赦なく吹き荒れ、その結果、現れいずる結論は、


 「日朝の歴史の裏には妖術あり!」
 「忍法も忘れるなよ!」


 なのでアリマス。
結果、読者は「だからなんでこうなるの」と困惑しつつも、
「だって荒山先生だから…」という納得を抱えて
満悦するのでアリマス。


 なお、本作に柳生は一文字たりとも出てませんが、
それをカバーして余りあるくらいの妖術があります。
そんなこんなで、今回もオススメできるでアリマスよー。
当方も早いとこ高橋メソッドを用意しなければ、で砂。